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ほうきが説明することには、現在進行中の魔法プロジェクト――つまり、後藤亜里沙と沢崎修司カップル大作戦――の影響で、わたしに関しては、魔法の副作用がどの程度のものか、予測不可能な状態になっているらしい。
「ちょっと、想定外のことで、こっちも驚いてるのよー」
と、ほうきは言った。
「あの、後藤って子、すごいマイナスオーラなのねん。もう、空間ごと歪むくらいの凄まじさで、魔法の源であるこっちが、ひきずられてしまいそうな位なのよー」
後藤さんの、サダコのような目を思い出す。
乱れた前髪の間から、白目がくるっと返りそうな血走った眼がのぞき、呪詛の言葉をぼそぼそと……。
後藤さんが只者じゃないことは、ここ数日の経緯でよくわかった。
あの、魔女っ子テーマソングの宮廷舞踏を思い出してみるがいい。異空間の夢世界に迷い込んでしまったわたしは、本来、あの舞踏会には存在しないはずなのだ。誰一人見えるものがいない中で、後藤亜里沙はわたしを認め、獲物――沢崎修司――を抱え込みながら、「じゃますんなばばあ」と、口パクでののしったのである。
現実の庶務課での後藤さんは、夢の記憶などすっかり消えてしまっていて、わたしを見てもそれらしい反応は全くなかった。
これは想像だが、現実世界の裏側に人の運命の糸がもつれている異次元があって、魔法はわたしに、その世界の状況を夢で見せてくれているのではなかろうか。
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