十秒ルール

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 あんっ、おふんっ、あ、あああ、愛様あ、愛様あんっ、ももも、もっと、もっと強くぶちのめしてくださいませ、この野ブタ野郎にいいいいいいっ、あひいいいいいいんっ……。  (真性変態)  しかし今はまだ、現実だ。寒い冬の夕方のとおりである。  ふはふはと白い息をはきながら、ぎとぎとの目で、白鈴木氏はわたしに迫るのだった。  そこにほうきからの返信テレパスが。  (あ、あはん、だめ、制御不能、逃げて)  ごめん、後藤って子のマイナスエネルギーが侵食していて、魔法がおかしな具合にねじまがってるのん。やばっ、おっかしいなー、あっれー。   あ、だめだめ、十秒以上見つめあったら、引きずり込まれちゃうから注意よおっ、愛ちゃん。  (っぎいえええええええええええええ)  すいませんちょっと急いでいるもので、と言い捨ててわたしは小走りになる。  角を曲がったところで、そこにいた人とぶつかりかけた。  これまた至近距離で顔を覗き込まれ、にたあと笑われて、わたしは今度こそへたばりかけ、どこの店だか、壁に背中をつけて体を支えたのである。  黒縁メガネのサラサラお坊ちゃまヘア、白佐藤セイちゃんじゃないか。  なんで貴様がここにいるんだ。  「愛ちゃんじゃないのぉ、偶然だねぇ、うわぁ、すごい運命って感じぃ」  いやいやいや、わざとらしい。  ぎらぎらする目が眼鏡の奥からわたしを捉えている。     
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