十秒ルール

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 うぐっ、あかん、生理的にあかん――かがんでケツ毛を見せて幻滅させる作戦など、頭から吹っ飛んでいた。  (よく見たらイケメン……なわけあるかあああああっ)  なれなれしく手を伸ばしてきたのを振り払うようにして、前につんのめるようにして走り出す。  「愛ちゃーん」  「黒山田さんっふはふはふはっ」  背後からどうして追いかけてくるんだ。なんの悪夢だ。どうなっているんだ。  ちょっとしたパニックに見舞われていた。  考えたくもないが、二人の「白」氏はわたしをストーキングしていたのだろうか。  (アパートの部屋までばれているかもしれないな)  いざとなれば、撃退してやる気構えは備わっているが、それにしても気色が悪い。  例えるなら、叩き潰すこと自体は簡単だけど、直視するのも不気味な虫と対峙しているような気分なのだった。  「ぜはっ、ぜはっ」  息切れ再び。なんなんだ、また筋肉痛、腰痛地獄が来るかもしれないな。  わたしは適当な路地に飛び込み、まず目についた喫茶店に飛び込んだのだった。 **  からんからん――穏やかなベルが鳴る。  息を整えながら、わたしは平静を装う。     
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