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うぐっ、あかん、生理的にあかん――かがんでケツ毛を見せて幻滅させる作戦など、頭から吹っ飛んでいた。
(よく見たらイケメン……なわけあるかあああああっ)
なれなれしく手を伸ばしてきたのを振り払うようにして、前につんのめるようにして走り出す。
「愛ちゃーん」
「黒山田さんっふはふはふはっ」
背後からどうして追いかけてくるんだ。なんの悪夢だ。どうなっているんだ。
ちょっとしたパニックに見舞われていた。
考えたくもないが、二人の「白」氏はわたしをストーキングしていたのだろうか。
(アパートの部屋までばれているかもしれないな)
いざとなれば、撃退してやる気構えは備わっているが、それにしても気色が悪い。
例えるなら、叩き潰すこと自体は簡単だけど、直視するのも不気味な虫と対峙しているような気分なのだった。
「ぜはっ、ぜはっ」
息切れ再び。なんなんだ、また筋肉痛、腰痛地獄が来るかもしれないな。
わたしは適当な路地に飛び込み、まず目についた喫茶店に飛び込んだのだった。
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からんからん――穏やかなベルが鳴る。
息を整えながら、わたしは平静を装う。
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