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高級志向の店らしい。だけど、どこかお洒落だ。流れている音楽もガーリーな感じだし――ぐるっと見回した――ぽつぽつとお客が座っていて、だいたい若い女性客だった。
結構大きな店だ。
カウンターの奥から、マスターらしい背の高い人が穏やかにこちらを見ていた。
カッターシャツを着て、黒いエプロンをしめている。
ふわっとした自然な髪はふっさりとしている。年のころはわたしより少し上くらいか。すらっとした体格だけど、うでまくりした腕は引き締まり、まことに良い感じなのだった。
どうぞ、カウンターは空いていますよとマスターは深みのある声で言った。
なぜか狼狽えながら、わたしはもたもたとカウンター席に座る。
「ブラックコーヒーを」
と、わたしは切れかけた息の下で言い、マスターとなんとなく目があった。
ブルータス、お前もか。
マスターは、黒い瞳に意味深な光をたぎらせ、わたしを真正面から凝視していたのである。
魔法だ、また魔法が作用している。
思い出した。
眠りに入る寸前、ちゅっと顔に何かがかかったではないか?
ほうきの奴、あれだけ脅したにも関らず、また件の化粧水を噴きかけやがった……。
(え、あ、あらやだっ、な、なんのことかしらっ、マコわかんなーい)
ほうきのテレパシーが飛んでくる。
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