もずく

3/14
前へ
/339ページ
次へ
 かおるさん、ケニアとマンダリンがひとつずつ。  ああ、わかったよ三番テーブルだね、愛。  (っかあああああああ)  妄想ワールド。  きらきらオレンジの輝きの中に煌めいて、二人。  どんなシンデレラよりも、わたしがシンデレラ(意味不)。  ガラスの靴は必要ないの。幸せへのプレリュード。奏でる二人の愛の物語……。  っかあああああああ。  っかあああああああ。  (あっらー、いいじゃなあい)  ほうきのテレパシーが飛んできて、わたしは危なくも正気に返る。80年代りぼんの世界から40歳魔女初心者にようやく戻ってこれた。  (やだやだやーだー、愛ちゃん、このまま彼を射止めちゃえ。顔も性格も経済力も花丸、こんないい男他にいないわよおん)  くそ。  わたしはコーヒーを啜りながら腹の中で歯噛みする。  悔しいが、ほうきの言葉は否定できない。  白山本かおるは非の打ちどころのない男である。どうしてまた、こんな男が余っているのか分からない。  いやいやいや、恋人がいるかもしれないじゃないか?  「……彼氏と待ち合わせ?」  不意に、マスターが質問してきた。さりげない。だけど目が光ってる。     
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加