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その日、わたしは40歳の誕生日を迎えた。
庶務課では一番の長老であり、お局の貫禄は自覚するところである。
ちなみにわたしは年を秘密にしている。永遠の35歳なのだけど、誰もがそれを嘘だと知っている。
朝から苛々としていた。
だいたい、真夜中の2時に携帯が鳴るからなにかと思ったら、妹がメールしてやがったのだ。
妹のメール着信は「キューテ●ーハニー」が鳴る設定だけど、暗闇のワンルームにそれが鳴り響いたのである。
なにごとかとメールを開いてみたら「ハッピーバースデー。今日、そっちに届くからね」とだけあった。
絵文字つきで。
なにが届くというのだ。
妹は実家に居座っている分、長女であるわたしよりも、黒山田一族の40歳のならわしについて詳しい。
腐っても女子が40歳になるまで独身状態であるなんて、親としてはおぞましいだろうし、わたし自身も想像しておらなんだ。気が付けば39歳11か月となっており、そして今は見事に40歳だ。
こうなるまで、わたし自身も、その「ならわし」について親に聞こうともしなかった。
親だって、具体的に説明してくれようとしなかった。
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