火だるまケーキ

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 どろどろの物凄い格好で、清潔極まりないお洒落なケーキ店に入る。  ちりんちりーん。  クリスマス間近の店内はデコレーションが美しい。  サンタ姿の売り子がこちらを見て一瞬固まった。  予約していた黒山田だと言うと、奥から誠に可愛らしいデコレーションケーキを持ってきてくれる。  真っ白な生クリームに、ピンクのバラがいっぱい飾られて、にこにこ笑っているうさぎちゃんがいた。  「ハッピーバースデーあいちゃん」と、チョコレートに書いてある。  これでよろしいですかと聞かれたので、結構ですと答えた。  箱におさめてくれ、勘定を払う。  売り子のおねえちゃんは笑顔をはりつけて、義務のように聞いた。  「お子様のお年を伺っていなかったのですが、蝋燭はいくつつけますか」  ジングルベルジングルベル鈴がなる。  楽しい音楽が店内には流れていて、学校帰りらしい女子高生二人連れがケーキを選んでいる。  きゃいきゃい、きゃいきゃい……。  わたしは静かにおねえちゃんを見つめた。  眼鏡の奥のまなこ。  庶務課の鬼局の黒山田に睨まれたら石になる――そんな陰口を叩く奴がいるくらいの、まなこだ。  「40本」  平たい声で、わたしは言った。  「40本、蝋燭を下さい」 **  こつこつと歩く。     
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