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町の賑わいは途切れ、寂しい道となる。
フェンスの向こうは土管が積まれているし、高架橋の下は陰気に暗かった。
後ろから鼻息が荒い気配が近づいたけれど、わたしがひとにらみすると、無言で足早に通り過ぎた。
痴漢ですらまたいで通る、恐るべき40歳。
ケーキの箱を持って、アパートに戻った。
がんがんと、外付けの階段を上る。
わたしの部屋は二階の角部屋だ。吹きさらしの通路を歩いていると、美味しそうな匂いが漂ってきた。
隣の部屋は既に食事時を迎えている。
むしゃくしゃしながら自室に入り、あかりとエアコンをつけた。
どかっとちゃぶ台の前に座り込むと、コートを脱ぎ捨てる側からケーキを箱から出して、どかんと置いた。
可愛らしいケーキよ。
今から目に物見せてくれる。
誕生ケーキには蝋燭だろう。
1本、2本……刺していった。
上面はまもなくいっぱいになり、側面にも突き刺してゆく。
辛うじて40本のねじねじ蝋燭を突きさすことができたバースデーケーキは、まるでカラフルなハリネズミだ。
わたしはそれを眺めながら、ちょっと考えた。
手元にはライターがあるけれど、一つ一つに点火していくのは手間だ。
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