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507号室
そのマンションの自分の部屋は5階で、同じフロアには501号室から507号室までの7部屋あった。単身者限定なので、つまりは5階に7人住んでいることになる。自分を含め、501号室から503号室の住人はわかっている。あとの4人はどんな人達なんだろう、と時々考えていた。案外、同じマンションに住んでいても、会うことも会話をすることもない。田舎住まいだった私は、それが不思議なことに思えた。
入居して1年ほど経ったある日、ちょうど私が自分の郵便物をロビーで確認していたところ、弾みで507号室の郵便物が落ちてしまった。自分のせいなので、郵便物を必死で507号室のポストに押し込んだ。しかしかなりきつく、全部入るかわからなかった。私はため息をついた。その時、後ろから声がした。
「そこの家の人、きっと夜逃げしたのよ」
声の主は、501号室の石川さんだった。
「夜逃げですか?なんで?」
「家賃が払えないんでしょ、きっと。でもずっとこうだから、もうこの世に居ないかもね」
私は、石川さんの言葉に絶句した。そういえば、入居の際、不動産会社から何度も会社に勤めているのか、年収は間違っていないか聞かれた。証明書も出しているのに。しつこいので変だと思ったが、507号室のせいだったのか、と納得した。
「今、そういう人多いみたいよ。あたしも気をつけないと」
そう言って、石川さんはエレベーターに乗った。私も慌てて507号室の郵便物を押し込み、部屋へ帰った。石川さんの言葉がずっしりきた。仕事辞められないな、と思った。
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