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「今まで使い果たしすぎでしょ。」
「は? 」
「いや、奇跡。」
だってそうだ。
「私はずっと、君が羨ましかったけど。」
「あー。まぁ、イケメンだしな。」
「そういう自意識過剰なとこもね。」
「まじかよ。ごめん、俺おまえのこと、そういう目で見てないから。」
「皮肉だよ馬鹿。」
「知ってるわ馬鹿。」
なんてふざけあってもいられないや。
どうしても、こいつと話すと冗談ばかりになってしまう。
素直になれない。
素直に口に出してみても、結局冗談にしてしまう。
「ねぇ。」
「ん? 」
「いつまでいれるの? 」
「さぁ。わかんねーけど、もういる意味ないっちゃないよな。答えは出てるし。海佳の飯もうまかったし。」
「そっか。」
「あとはまぁ、心残りは、海佳に納得してもらうくらい? 」
どきっとした。
自分でも気づかなかった奥底を、当てられた気分。
「だって..。」
納得なんて言われても。
どうしたらいい。
頭の下の方から、真っ白いものがじわじわ侵食してくる感覚に襲われる。
私が納得しなかったら、この人は、ずっとここにいてくれるんだろうか。
だって。私は。
「行かないで欲しいよ..。」
目は、見れなかった。
困らせるって知ってた。
「うん。」
優しく受け止めてくれることも。
「ごめん。」
私の言葉1つなんかじゃ、変わったりしないってことも。
知ってた。
「いつも1人で決めてるくせに。」
「うん。」
「相談するために来たとか、都合のいいことばっか言って。」
「うん。」
「私しかいない、みたいな顔して。本当は他にもいる癖に。」
「うん。」
「それでも、私に付き合ってくれて。遊んでくれて。くだらない話も全部聞いてくれて。中学から、ずっと一緒にいてくれて..」
言葉が詰まった。
これ以上話したら、泣いてしまいそうだ。
ダメだ。
泣いちゃダメ。
翔也は、「ユリちゃんは泣いてしまうから」私のところを選んだと言った。
こういう話をして、泣いて欲しくないから。
私のところに来たんだ。
なら、私は友達として。
それを叶えなきゃ行けない。
翔也を困らせちゃいけない。
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