1人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・きいてもいい? 」
「ん、なに? 」
「あんたさ。飲酒運転だったんだよね。」
翔也の顔は見ていない。
でも、表情が曇ったのは、何となくわかる。
「・・うん。」
「私、いつも言ってたよね。やめなよって。歩いて帰ろうって。」
「うん。」
「なのになんで。こうなるかもって、思ってくれなかったの? 」
「・・・・。」
「私達もう、これから先、二度と会えなくなる。遊べなくなる。話もできない。」
「うん・・。」
「・・私のこと、私の言ったこと、思い出して、ほしかった・・。」
少しだけ、翔也の方を向く。
目は合わない。
翔也は視線を落としている。
私の方を見ていない。
「いやー・・。うん。それに関しては。うん。ごめんとしか、言い様がないわ。」
翔也は、目線を合わせないまま、そう言った。
居心地が悪いのか、体勢を変えながら。
「まぁ、酔ってたのもあるし。近くだから大丈夫だろって思ったし。」
「・・ほんと馬鹿。君はそうやって、いつも考え無しに動く。」
「ごめん。ほんと。・・来世では気をつけるわ。」
あ。
いつも、冗談で使ってた言葉。
でも、その言葉は、重いな。
今の私達には。
「・・ほんと、気をつけてよね。」
「うん。」
2人の間に、白いテーブルがあって良かった。
行き場のない視線を落とせる。
やっぱりこいつは、なんの考えなしに。
私のことなんか思い出してもくれずに。
軽率に。
楽観的に。
車に乗って。
あんな状態になったんだ。
自業自得。
翔也の言う通り、奇跡なんて起きっこない。
救いようがない。
むしろ、すぐに死ぬことも無く、それどころか、ここに来れたのが奇跡だ。
生きてる時だって、散々使い果たしてたはずなのに。翔也の使いすぎのせいで、不幸になった人がいるんじゃないかって思えるくらいに。なのに、なんでまだ残ってたんだろう。
そっちの方が不思議なくらいだ。
「でもさ。」
「ん? 」
口を開いたのは、翔也からだった。
「俺さ。ぶつかった! って思った瞬間、もう終わったって思ったんだよね。」
「うん。」
「その時1番に、海佳のこと思い出したよ。海佳ごめんって。海佳ともっと、いたかったなって。」
最初のコメントを投稿しよう!