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と、いうのが昨日の夜までの出来事だ。
私の記憶が確かなら、今頃翔也はベッドの上で。
点滴を繋がれて。
酸素マスクをつけられて。
モニターやチューブ類に囲まれて。
寝ているはず。
なのに。
なのに、なんで。
なんでこいつは、今私の前でご飯を食べてるの?
ケロッとした顔をしてるの?
私が昨日見たのは?
幻?
それとも、今が夢?
「なんか、今お前の考えてること、なんとなくわかるけど。」
ご飯を食べ終わった翔也が、私の方を見て苦笑しながら言った。
「まぁ座れよ。」
「ここ私の家だから。」
いつもの調子でやり取りをしながら、私はテーブルを挟んだ翔也の真正面に座る。
「いやね? 信じてもらえないかもしれないけどさ。」
「うん。」
「運転してたら意識がふっと遠のいてさ。ぶつかって。」
「馬鹿。」
「それな。でも痛くなくてさ。なんか空飛ぶ夢見てたんだよね。」
「は? 」
「そしたらさ、めっちゃくちゃ光ってる太陽? 光? みたいな奴が話しかけてきてさ。」
「うん‥。」
「俺さ。このまま目が覚めたら、全部の記憶がなくなるんだって。」
「‥‥え? 」
「だから、全部なくなって目が覚めるのと、全部覚えたまま、その光みたいなやつについてくの、どっちがいい? ってきかれてさ。俺1人じゃ決められなくて。相談したいって言ったら、このことを他言しないって信頼出来る1人だけなら会いに行っていいって言われて。で、それなら海佳だなって思って。海佳の所に行きたいって言ったら、気がついたらこの姿で海佳の家の前だった。」
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