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「え、ちょっとまって。」
いやいや。
まって。
頭が追いつかない。
「まって。うん。整理しよう。」
「いや、俺は整理できてるけど。」
「いいの。まず、目の前にいるこいつは、本当に翔也なんだね。」
「逆に知らない奴を一人暮らしの家にあげて飯食わしてたの? だとしたら俺引くわ。」
「うるさいな。今そういうことじゃないの。」
「信じらんないなら、お前の中学の時の話でもしようか? 」
「わかった。ごめん。黙って。」
「先生にクラス全員で怒られてた時、急に席から立ってー」
「黙って!! 」
身を乗り出して話し出した翔也の肩を、思わずいつものノリで叩いてしまった。
触れる。
あたたかい。
幽霊とかじゃない。
傷を痛がったりとか、そういうのもない。
本当に、本当の、いつもの翔也だ。
「な? 」
私の考えてることを、見透かしたように。
意地悪そうな顔で、翔也は笑った。
「‥あんたが本当に翔也なら‥翔也なんだけど‥病院には、今翔也はいないってこと? 今もし私が病院に行ったら、あのベッドには誰もいないってこと? 」
「いや、俺の身体はあそこで寝てるよ。昨日見たのと変わらない。今お前の前にいる俺は、魂だけっていうか。だから、怪我もしてないし意識もある。いつもどおり。」
昨日と変わらない。
その言葉は、重い。
昨日、夢ならいいのにと思っていたことが、現実だと、余計に突きつけられてしまう。
「‥魂って、もっと触れないし、実体もないものだと思ってた。」
「俺も。でも、まぁ、そんなの想像だから。お前が今見てるこの現状が、事実であり真実。」
なんか腹立つ。
「で。次に。なんで私のところに来たの? 」
「いや、1人って言われたからさー。父さんと母さんは2人だし。どっちか選ぶのかわいそーじゃん。」
「まぁね。たしかに。」
「ユリちゃんと迷ったんだよねー。」
「ユリちゃん? 」
「あれ? 言わなかったっけ。彼女。同じサークルで、2週間くらい前に付き合った。」
「きいてないよ。」
「すげーおっぱいでかい。」
「そこはどうでもいい。なんでユリちゃんにしなかったの? 」
「んー。まぁ。いいじゃん。相談といえば海佳でしょ。」
こんなやつのこんな言葉に、優越感を覚えてしまう。
私はバカだ。
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