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「で、相談しに来たってこと? 」
「うん。俺はついて行った方がいいのか、起きた方がいいのか。」
「‥それ、もしついて行ったら、死ぬってこと? 」
「わかんね。たぶん? 」
他人事だ。
自分の話だなんて思えないくらいの軽さ。
「信じられないけど。信じるしかない。目の前にあることが現実で真実だもんね。」
「真実で事実な。ほっぺつねってやろうか? 」
「自分でやるから大丈夫。」
「さらにブスになるよ。高校の授業中、よくつねってたよな。」
「今それ関係ない。」
「あの顔はひどかったわー。饅頭みたいだった。」
「うるさいな。てかなんで覚えてんの。」
こいつはいつも一言も二言も多い。
「で、俺はどうしたらいいと思う? 」
真っ直ぐ。目を見て。
きいてきた。
私の答えは、1つに決まってる。
「私は、君に、戻ってきて欲しい。」
「全部忘れてても? 」
「全部忘れてても。」
私も、目を逸らさずに。
正直に伝えた。
「やっぱり。そう言うと思ったよ。」
一息ついたような。
ほっとしたような、裏切られたような。
そんな顔で、翔也は胡座をかいた。
「ユリはさ、」
「彼女の? 」
「うん。どっちの所に行こうか考えてた時、この質問をしたらさ。ユリは泣くと思ったんだ。」
「そりゃあね。恋人ならね。」
「ちゃんと意見してくれる人が欲しかった。」
どこか寂しそうに笑うその顔に。
私は気付いた。
これは、勘だろうか。それとも、長年こいつといる経験値故だろうか。
どちらかなら、後者であってほしい。
「ねぇ。本当は、もうどっちか決めてるんでしょ。」
私は翔也を見据える。
翔也は驚いた顔をして、私の目を見た。
「なんでわかるの? 」
「なんとなく。どっちがいい? なんとなくの正体は、勘か経験値か。」
「それ、決めていいの? 」
「選ぶだけ自由。決めるわけじゃない。」
「じゃあ、経験値。」
「私もそうがいい。そういうことにしよ。」
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