孤独

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孤独

 僕が吐く言葉は毒になる。 「ねぇ、今日こそ言ってくれるかしら?」  だから今日こそ今日とて洩れるのは汚い言の葉ばかり。 「似合ってない。その青はお前には派手過ぎる。脚の出し過ぎだ。はしたない。汚物だ。そんな物を僕に見せるな」  昨日新調したと思しき麗しいドレスを見事なまでに着こなす女性に暴言を。空っぽの上っ面すらない無慈悲な文言。  あまりにも自信に溢れていたのだろう。彼女のアウイナイトの宝石ように丸く輝く瞳に飴玉の如く涙が溢れ出し、みるみる流れ頬を伝う。 「今日もあなたは酷い人」  ほんのりとつけられた化粧を不気味に流しながら、ある意味悍ましい笑顔を浮かべて女性は走って逃げた。小さな溝にヒールを食い込ませかけたが、僕が助ける訳も無く、小さく無様な姿はそそくさとその場を立ち去った。  辺りには元通りの静寂が訪れ、夜の帳に小さな虫たちがチロリチロリと合唱を始める。いや、随分と前から合いの手をやっていたのかもしれないが、僕には気にもならない事だ。  だってそうだろう。  こんなにも滑稽なのだから。  彼女が無様だって? どの口が言うのだろう。  僕は強く拳を握りしめ、己が頬を殴った。     
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