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当然痛かった。鈍い音。骨と肉が擦れたような擬音がした。僕はマゾヒストではない。痛ければ辛いし、泣く。酷い人間でも、涙は出るものだ。
マゾヒストでは無いが、エゴイストだ。人間が自分勝手とはよく言うが、僕はその中でも上位に行けるんじゃないだろうか。
僕が吐く言葉は毒になる。
「汚い、穢らわしい、みっともない、みすぼらしい」
汚い言葉。侮蔑、見下し、軽侮、何て哀れな言葉達。するすると僕の口から漏れ出しては空気に混じって消えていく。
けれど僕の心には突き刺さり続けた。ぐさりぐさり。いくつもいくつも。行く宛のない軽蔑の言葉たちはすべて帰ってくる。
では、行く宛のある言葉は何処へ行く?
考えるまでもない。他でもない僕が贈り続ける凶器の矛先は、全て彼女へ向いている。
彼女と話し始めてどれほど経ったか。数日だった気もするし、数年だった気もする。後者であったら、否、前者であっても、彼女は僕以上にその剣を深く深く突き立てられているはずだ。
彼女の今日の身姿は、僕が今まで散々言い続けた悪口を全て回避した、完璧な衣装をまとっていた。つまり、僕の貶し言を全て受け止めたということだ。
全てをしっかり突き刺して。
どれほどの痛みだろう。僕が考えられるはずも無い。考えた所で浅はかだ。彼女の心を殺しているのは、僕だ。
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