孤独

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 僕が吐く言葉は、どれもこれも毒にしかならない。  今日も今日とて、やはりと言うべきか、然程大きくない庭の森端に、淡白色の衣服を着こなす女性が一人、ぼんやりと言う風に空を見上げていた。  僅かばかりに短くなったロングヘアが、そよ風に撫でられ、月と星々の幽かなる光によって、神秘的空間を作り出している。  当然に僕は今日も今日でも道化師(ピエロ)を演じる。  若干の立て付けの悪い扉を開けば、悲鳴の如き金具の軋む音が夜空に響き、僕の訪れを彼女に伝える。彼女はそれを待ち望んでいたように、夕陽(せきよう)に頬を染め、薔薇が花開いたように顔を明らめつつ振り向いた。  それは色とりどりに咲き誇る庭園のどの花よりも、可憐で、儚い。少し悪戯に風に煽られでもすれば、攫われてしまうくらい。  そうして、彼女は決まり文句を言うのである。心底から楽しみにしているように。 「ねぇ。今日こそ、言ってくれるかしら?」  残酷に。 「……似合ってない」     
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