図書室の追いかけっこ

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あれ? りこは思った。 なにか奇妙だ。 書棚は高さ二メートルはある。 どうしてあそこから覗き込めるのか。踏み台や梯子などはなかったはず。 りこはなんだか急に怖くなってきた。 もう帰らなきゃ。 無言のまま書架の間を縫って出口の方へ向かう。 すると。 「ねえ、待って。」 女の人の声がすぐ横から聞こえた。 吸い寄せられるように、そちらを見た。 ひまわりの柄のスカートをはいた女の人が立っていた。 視線が合う。 近くで見ると女の人は恐ろしいほど白い顔をしている。 そして首の長さだけが異様なほど長い。三十センチはあるように見える。 そしてなぜか首の一部の皮膚がひどく黒ずんでいるのだ。 「先生とここで、遊ぼう?ずうっと・・・」 そう言って女の人は近づいてくる。 りこは小指一つ動かせないで固まっている。 ぜんぜん、声も出ない。 女の人はりこの目前まで来ると、屈んで顔を覗き込んだ。 りこは目を閉じようとしたがそれも出来ないのだ。 どうしよう!? その時、突然入り口のドアが開かれた。 「りこちゃん!!」 あきなだった。 りこの姿を見つけるなり駆け寄って来る。 後ろには司書の先生の姿もあった。 「あきなちゃん!!」 喉の奥から声が迸り出た。 必死であきなに抱きつく。 「あきなちゃん、あれ!」 りこは女の人がいた方を指差した。 「誰もいないよ・・・。」 りこもそちらを見たが、すでに女の人の姿は無かった。 落ち着くと司書の先生に今起こった事を話した。 この女性の司書の先生は長年この学校に務めている人だ。この図書室にも詳しい。 りこは事細かに女の人の特徴を伝えた。 司書の先生の表情が一瞬曇ったのを、りことあきなは見逃さなかった。 「ほら、誰もいないわよ。さあ行きましょう。」 それだけ言って二人を促すと図書室の外に出たのだった。 その後、りことあきなはもう第二図書室に近づくことはなくなった。 それから程なくして、第二図書室は使用禁止になった。今は常に施錠されている。 職員会議で決まった事らしい。
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