図書室の追いかけっこ

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りこは考えないようにして、再び書棚の間へと戻った。 自分以外の足音は聞こえない。 しばらくすると再び何かが書棚の端で動くのが見えた。 今度は見間違いとかじゃない。 はっきり見えた。 ひまわりの花柄のスカート。 視線をそちらに向けると、書棚の横から顔を少しだけ出して、誰かがこちらを覗いている。 黒い、長い髪・・・。 女の人だ。 りこはそこへ駆け寄った。 女の人はすぐさま身を翻して逃げた。 りこが反対側に回る頃には、もう姿が見えないのだ。 ああ、分かった。 きっと誰かが追いかけっこがしたくて誘っているのだ。 りこはそう思った。その証拠にまた違う書棚の陰から、その女の人が少し顔を出して見ていたのだから。 りこは嬉しくなった。 すぐにそっちへ向けて走り出す。 でもそこにたどり着く頃にはもう姿が見えなくなっている。 そして今度は別の所から顔を出している。 絶対捕まえてやるんだから。 りこはもっと勢い込んで追いかけた。  奇妙な、楽しい追いかけっこはしばらく続いた。  ふっと見るとごく近くから女の人はこちらを見ていた。 だがそれは書棚の端ではなく書棚の上からだった。 顔の上半分が覗いて笑っている。
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