16人が本棚に入れています
本棚に追加
りこは考えないようにして、再び書棚の間へと戻った。
自分以外の足音は聞こえない。
しばらくすると再び何かが書棚の端で動くのが見えた。
今度は見間違いとかじゃない。
はっきり見えた。
ひまわりの花柄のスカート。
視線をそちらに向けると、書棚の横から顔を少しだけ出して、誰かがこちらを覗いている。
黒い、長い髪・・・。
女の人だ。
りこはそこへ駆け寄った。
女の人はすぐさま身を翻して逃げた。
りこが反対側に回る頃には、もう姿が見えないのだ。
ああ、分かった。
きっと誰かが追いかけっこがしたくて誘っているのだ。
りこはそう思った。その証拠にまた違う書棚の陰から、その女の人が少し顔を出して見ていたのだから。
りこは嬉しくなった。
すぐにそっちへ向けて走り出す。
でもそこにたどり着く頃にはもう姿が見えなくなっている。
そして今度は別の所から顔を出している。
絶対捕まえてやるんだから。
りこはもっと勢い込んで追いかけた。
奇妙な、楽しい追いかけっこはしばらく続いた。
ふっと見るとごく近くから女の人はこちらを見ていた。
だがそれは書棚の端ではなく書棚の上からだった。
顔の上半分が覗いて笑っている。
最初のコメントを投稿しよう!