3.麻雛

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「もういいよ。警察呼んだりしないから帰りな」 「嫌です」 「は?」 「嫌です。夏希さんに話聞いてもらうまで帰りたくありません」 「図々しい」 「高校生ですから」 「意味分からない」 「じゃあ分かってもらえるまで帰りません」  キレて、怒鳴り付けて済むのならどれだけ楽だろう。  しかし、私にはとてもそんな気力などはなかった。 「話したら、満足して帰るの?」  麻雛は喜びを隠そうともせず首を縦にぶんぶんと振る。  まるで犬がしっぽを振っているかのようだ。 「仕方ないわね……。ちょっと待ってなさい」  私は重い体を起こしてキッチンに向かう。  キッチンの灯りを点けるのも億劫で、暗闇の中、冷蔵庫を開ける。  片手で缶ビールを2本取り出して……1本戻した。  代わりに200ミリパックの牛乳を掴む。  子犬にはミルクで十分だろう。
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