3.麻雛

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「……受け止めます」  ぽつん、と麻雛は口にした。  誰から誰へと贈られるといった種類の言葉ではなく、ただこの空間に漂わせるように、言った。 「何を?」 「今の夏希さんも、今までの夏希さんも、これからの夏希さんも」  今度は、力強く私を見据えて言い放った。  私はほんの少しだけ、可笑しくなった。 「若いっていうより、子供だね」 「夏希さんが望むなら、すぐに大人になります」 「こんな空っぽの私の、どこがそんなにいいの?」 「大切な人を失って、ぽっかり空いてしまった穴を俺で埋めてみせます」 「眞琴さんの代わりになるつもり?」 「いいえ、俺は俺です。俺なりに夏希さんの心を満たしてみせます」  麻雛のこのエネルギーの源。  それは若さ故の盲信や意地、陶酔の類以外何物でもない。  だがしかしそれらは、明らかに私が完全に失ってしまったものだった。  これが、未来というものの体現なのかもしれない。  麻雛は、そんな未来に私を連れ出そうと、熱っぽく語り続けた。  あの人を失ってから、どこかの誰かに言われたありふれた言葉たちを生み出し続けた。  麻雛の声に急かされるように、時計の針は進む。  それでも麻雛の口は止まる事を知らない何かの機械のように、リズムを切らさず動き続ける。  時が流れる。  私の中で止まっていた針が、軋みながらゆっくりと動き始める。
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