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「麻雛。もういい」
「え?」
不意を突かれ、麻雛はまくし立てるのをやめる。
ローテーブルには空き缶が転がっている。
「もういいから。麻雛が言いたい事、分かったから」
「でも……」
「本当に。分かったから」
私は念を押すように、深く頷く。
「夏希さん」
それでも立ち上がらんばかりの勢いの麻雛を制し、私はもう一度、頷いた。
「もう帰りな」
「夏希さん……」
まだ何か言いたそうな麻雛だったが、私はそんな麻雛に背を向け、カーテンを引いた。
空の片隅から、光が溢れていた。
「学校、行きなさい」
「でも」
「自分に決められた事も出来ない人の言葉に、説得力なんて伴わないよ」
「じゃあ今帰れば……俺の話、また聞いてくれますね?」
私は、曖昧に目を閉じた。
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