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4.カーテン
この部屋に静寂が戻って、しばらくの時間が過ぎた。
私は随分と久しぶりに、鏡台に向かっていた。
アイラインを引いて、ファンデを塗って。
鏡の中の私が、変身していく。
麻雛は家を出るとき「絶対に振り向かせてみせますから、それまで待っててください」と言った。
そんな事になるはずはない、と思った。
私の脳の中のどこかに、それを否定する5%はあったのだろうか。
──待っててください。
待つ、という行為は手慣れたものだ。
だから、待つ事の難しさも知っている。
化粧を終えた私は、上手い事やつれを隠せていて、なかなかのものだった。
それにしても。
私が麻雛を待つ?
──ううん。
むしろ麻雛が私を待つ事になる。
私と同じように“その日”を、当てもなく。
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