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2.夏
季節は進み、夏。
梅雨が明けてもじめじめがなくなるわけでもなく、暑さが増していく分だけ不快だ。
朝がくればリビングにおりて、エアコンをつける。
もはや生活空間とは言えなくなったこの場所でもリビングと呼んでいいのか多少疑問に感じながら、ソファーに寄り掛かる。
夏休みなのだろう。
窓の外からの“定時連絡”は途絶えてしまった。
日に日に近付いてきていた男の幽霊とやらは、もう家を通り過ぎていったのだろうか。
──……そんなわけはない。何を考えているんだ。
私は首を振る。
そんな自分がおかしくて、笑みが零れる。
そう、笑みが零れたのだ。
無気力で自堕落な毎日を過ごしていた私に、だ。
それだけの変化を、たかだか幽霊の噂くらいのものが私に与えていたのかと思うと、今一度笑えてくる。
数%の希望もしくは絶望。
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