12人が本棚に入れています
本棚に追加
倒壊したアパートから私が救出されたのは、地震発生から20時間が経過しようとしていたときだった。
聡子さんのおかげで、私は衰弱していたものの、大きな怪我もなく助け出された。
ただ、私をかばったせいで、聡子さんは大怪我を負い、それが原因でお腹の赤ちゃんとともに、亡くなってしまった。
私のせいで、聡子さんは“母”になることもできず、妹は産声をあげることもできなかったのだ。
「……菜々緒の命を救ってくれて、ありがとうございます」
墓前で手を合わせた奏多は、そう言って深々と頭を下げた。「ナナの大切な人に、結婚の挨拶をしたい」と、彼は今日ここにやってきたのだ。
あれから二十数年が経ち、私はもうすぐ亡くなった聡子さんと同じ年齢になろうとしている。
最初のコメントを投稿しよう!