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どしん。
目の前の男は、腰から砕け落ちた。
終わりだ。俺の必殺右ストレートが、カウンターで決まったのだ。例え世界チャンピオンであろうと、立つことは不可能なはずだ。
俺は二度と立ち上がらないであろう男を背に、コーナーへ向かう。
瞬間、客席から歓声が上がる。俺の勝利を祝福してくれているのだと、そう思った。
だが、背後にただならぬ気配を感じ、振り返る。
奴が、虎太郎が立ち上がっていた。
有り得ない光景を目撃し、混乱している俺の脳裏に、一つの揺るぎない事実が突き刺さった。
恐らく、足が動かない俺が放った一撃は、十分に体重が乗っておらず威力が足らなかったのであろう。
それにしてもだ。本当に、根性のある男に成長したものだと感嘆する。
……いいぜ、とことんまでやろう。
俺は大学時代を思い出すかのように、可愛い後輩の元へ歩み寄っていった。
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