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第二、第三ラウンドも同じような展開になった。
俺は降り注ぐ左ジャブの嵐をガードを固めて、相手の懐へ入り、ボディへしつこいぐらいに連打を叩き込み続けた。
正直、この戦法は俺の得意とするところではないんだがな。やっぱり真骨頂は右ストレートを相手の顔面に叩き込んで、ずどんと一発KO!
だが、いいさ。勝つためならどんな泥臭い闘い方でも構わない。
俺はそう思案し、次のゴングを待ちながら口の中を水ですすいでいた。
「ううむ、何かがおかしい……」
「あ? なにがだよ?」
なにやら、うんうんと唸っているおっさんが鬱陶しいので、声をかけた。
「いや、なんで相手さん、こんな単純な戦法の対策をしてこないんや? 百人いたら、百人とも同じ戦い方をするのは自明の理やのに……」
「んなもん、俺が予想以上に強かった、てだけの話だろ」
「いや、強さ関係なしに、対策ぐらい講じるやろって話なんやが……」
おっさんが全ての言葉を言い終わる前に、第四ラウンドの合図が鳴り響く。
俺は腕を軽く回しながら、今度は威風堂々、歩み寄る様な歩幅でチャンピオンに近づいた。
さーて、同じように料理してやるぜと思った矢先、俺は違和感を感じた。
――なんだこの感じ。さっきまでとは何かが違う……。
だが、迷ってても試合は動かねえ。
そう思った俺は軽く左右に体を揺らしながら、一気に距離を詰め――。
ずどん!
強烈な衝撃が腕全体に伝わり、それを吸収しきれなかった俺は一時的に距離をとった。
先ほどまでとはまるで違う、明らかに重量が増したジャブ。
は? 意味が分からねえ。なんだよ、この威力。
負けじとインファイトを試みる俺をあざ笑うかのように、弾丸のようなジャブが的確に突き刺さる。
やがてそれは、ガードの間を掻い潜って俺の顔面を貫いた。
「がっ……!」
体の芯まで響いた衝撃を両足に力を入れることで、崩れ落ちそうになる体を踏ん張らせた。
それを好機と見るやチャンピオンの猛攻が始まった。俺はコーナーにまで追い詰められ、ワンツーのコンビネーション、アッパー、レバーへの的確な一撃と、滅多打ちにされた。
やばい、このままではレフェリーに試合を止められると思った矢先、ラウンド終了のゴングが鳴り、それに救われる形となった。
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