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「ハル、戻ってきて。俺が悪かったから」
殴られて血の滲んだ唇を拭いながら、伊豆原は徐々に前に進んでくる。
「うるさい」
「聞いてたんでしょ? 俺とマネージャーが話してるの。ごめん、俺はまだハルのことが好きだよ」
「う、るさい」
少しずつ安達との距離が縮まっていく。
「好きだよ。ハル、俺のこと、拒んでるみたいだったから、嘘吐いたんだ。ハルに迷惑掛けたくなかったから」
俺は好きだけれど、ハルは俺のことを好きじゃないみたいだった。ならば、周囲に勘違いされたら苦しむのはハルの方じゃないか。それが伊豆原の考えだった。
「う……る……」
「ハル」
「っ、我の力で……去りたまえ……!」
「拒まないで」
いつのまにか手に数珠を持った安達とその身体を抱き寄せる伊豆原との声が重なった。
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