41人が本棚に入れています
本棚に追加
◆ ◆ ◆
「ちょっといいかな? ここら辺で安達を見なかった? 安達ハル」
伊豆原が校庭の端で休憩している男子サッカー部員の一人に声を掛けた。
「安達?」
「ほら、右目に眼帯してて、右腕に包帯もしてる」
伊豆原は周りの生徒に尋ねながら、安達の後を追っていた。唯一、彼が救われたのは安達の特徴が特殊だったことだ。
「ああ、中二病拗らせてるやつね。さっき、そこの花壇で何かやってたけど。なんか、やっぱり、あいつ気味悪いよね」
「……」
何の言葉も返さず、安達の手掛かりを探して伊豆原は花壇を見た。花は無残にも掘り起こされていた。代わりに何かが埋められているようで土が盛り上がっている。そして、花の名前が書かれていた木の板には黒の油性マジックで「いちごミルクの墓」と書いてあった。
まさかと思い、伊豆原が土を掘り起こしてみると、そこには未開封のいちごミルクが埋められていた。
『俺は一日一回、これを飲まないと死んでしまうんだよ』
伊豆原の脳裏を安達の言葉が過った。
「ハル……!」
慌てて伊豆原は駆け出した。何処に向かったのか見当もつかないまま、また周囲の生徒に聞きながら、彼が辿り着いた場所があった。
最初のコメントを投稿しよう!