幸せのかたち

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 その病院は遠くて、しょっちゅう行けない。 母は天然で危なっかしい。 電車、乗り間違いそうだ。 そのうち病院を転々として、少し近くなった。  完全看護じゃないけど、と言いつつ男のスタッフが見て回る。 口は悪くても良くしてくれ、病院と()()契約(けいやく)している。  面会と言いつつ、母は差し入れにバナナとアンパンを用意し、 私が父の爪切りをしてた。 父は面会の度に、握手(あくしゅ)を求めた。 「毎日バナナとアンパンって、何よあれは」 母のボヤキに「今だけだから、好きなもの食べさせようよ」と私。  それを彼に言うと、どっちが親か分からんなだって。                          ##  
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