花園とアイス

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花園とアイス

 ベランダが煙草を吸う、あなたの定位置。  彼の部屋は煙草をつけると、ミーコがうるさい。  さながら、煙たいニャーとミーコ。  だからいつもベランダ。でも私んちでもベランダ。   わたしに煙が来ない様にしてる。  窓越しに彼が言う。 「お前んちのベランダって、花園みたいだ。」  春はチューリップとスミレ。夏は朝顔。 秋は南天(なんてん)とミニバラ。 そして、カランコエが何株も赤や黄色と咲き誇る。  冬は母が大事にしてた蘭とシャコバサボテンの花。 蘭は大きな植木鉢に二株もあり、かなりのボリューム。 シャコバサボテンも、毎年ピンクの花を咲かせる。 ベランダの花は、母の思い出の花達だ。  私は枯さない様に、注意している。 それでも夏の暑さにやられ、ハーブが何本か、枯れた。 それでも季節ごとに、花達はプランターにごっそりと咲き誇る。 彼は嬉しそうに、花達を見て煙草を吸っている。 「みゆ、アイスある?」 ほら来た。アイスクリーム魔人。冬でもアイス。  始めこそ、あるか?と聞いてたのに1年半も付き合うと、 冷凍庫をゴソゴソ。 「あったー!」と叫び。 「なぜ、そこにあるのが分かるのよ」 なんとなく・・と笑う顔。怒るに怒れないじゃない。 幸せそうにアイスを食べる、そんな顔したら、怒れないじゃないの。 「みゆも、食べる?」 いや、うちのアイスだし。あなたの為にストックしてるのよ。 無い時の、悲しそうな顔ったら、ないもの。 「お風呂上りに、冷たいのより温かいのがいいです」 「じゃあ、コーヒー入れて」 私はそのつもりでカップを出していたが、驚いた。 いつも、お腹がビックリしないかと驚いて聞き返す。 「アイスの次はコーヒー?」 「うん。冷える前に、今度は温めるの」 どういう理屈? もう笑うしかない。 「なに、笑ってるの?」 何でもないと返しながら、心で答える。笑いが止まらない。 あなたといると、まるで漫才みたい。
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