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自爆のお嬢様
考えれば彼の笑う顔しか、覚えていない。
「お前がこんなに、バカとは思わなかった」
数学の勉強の時の、呆れ声。
そのくせ。
「ケアレスミス、なくせ。合ってんのにさぁ」とか言う。
そう。私はあわてんぼう。
問題をきちんと読まず、これだ!と思い飛びついて、まんまと自爆する。
「まぁーた、みゆの自爆が始まった。」
ずいぶんな言い方もされたのに。
でもね、笑うあなたしか思い出せないの・・。
「一緒に食おう」とあなたと鍋をつついたり。
「みゆきお嬢様、お茶の時間です。」とかいって、
ふざけてコーヒーとお菓子を用意したり。
兄と一緒にお風呂に呼んで、3人でワイワイ。
不思議ね。
電車を乗り継いで、遠くの友人宅へ行く時も、
図書館デートの時も、いつもあなたは私の手を引いて歩いた。
「車が、来るぞ」
そう言って貴方は車道、私を歩道へ。
さりげない、そんな優しさも好きだった。
でもね、おかしなあなたも思い出す。
「みゆ~~~」
甘えた声で私に、何か頼むとき。
「みゆ、パン焼いて、コーヒー!」
「あれ、みゆの分は?」とコーヒーをすする。
「今、入れてます」
私、奥さんみたい。喜んで、やってるけど。
そういうあなたも喜んで「みゆ、みゆ」と連発して、力を貸してくれる。
私、何が返せる?何を返した?
美味しい物を作って兄と3人で、ワイワイやって、
ミーコにご飯をあげて。
あなたは家に来ると勝手にうちのインコを出して、遊んでいた。
末っ子のミドリは、いつもあなたの頭の上で。
「頭乗りインコが、出来た!俺、巣にされてる」
そう言って笑った。
忘れない、あの笑顔を。
桜の下で、最後に見たあの笑顔も。
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