あじさい

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パデルトンとは、ジャングルの奥深くの少数民族の喋る熊が、華のパリに上京してきて、ひょんな事から暖かい人間の家族と同居することとなり、夜な夜な悪人から泥棒をして困っている人達を助けると言う、可愛いヒーロー怪盗もので涙あり笑いありの人気作品だった。 * * * * * ここは、パリの倉庫が建ち並ぶ港。 月明かりも届かぬ倉庫のなかで男達の取引は行われていた。 突然の事だった。 天井が爆発し、男達の真ん中に位置した子犬達と金が爆発したのである。 いや……、正確にはその周りが爆発していた。 子犬と金は強化ガラスでできた大きなコップの様なものですっぽりと覆われ無事だった。 上に浮く気球から一人の熊が降り立ち、瞬時に子犬達の檻とスーツケースを紐で結ぶと、軽い身のこなしでまた篭へと飛び乗った。 『私は、怪盗パデルトン!動物密売人ども!この子犬達と金は頂戴していく!』 子犬達の檻と、金の入ったスーツケースは、気球の点火とともにゆっくりと宙を浮き始めた。 『逃がすか』密売人達が銃を構える。 『甘いな』不適な笑を浮かべたパデルトンは手元のスイッチを押した。 その瞬間、気球の篭の側面に沢山取り付けてあった重しの袋が一斉に落ち、気球は急上昇、見事弾丸を避ける。 落ちた重しからは催涙ガスが噴射され密売人達は気球を見失うまいと必死にもがいた。 『まてー!クマヤロー!』 路上を追いかける密売人、しかし、これは罠、ウウー!と言う。警察のサイレンに瞬時に包囲されお縄となった。
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