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映画のCMが終わりを告げる。
ガヤガヤとうるさかった、満員に近い館内に静寂が広がっていった。
* * * * *
三百年に一度、世界中のウサギの中から月の女神が選ばれる。
しかし、女神は選ばれてすぐに、試練を受けなければならなかった。それは一年間、人間として、人間社会の中で生きると言うものだった。
選ばれたウサギの彼女は、知識を与えられ10歳くらいの可愛らしい人の女の子となった。
ところが、ある男の子にその姿を目撃されてしまう。
しかし、男の子は驚く素振りもなく、生まれたままの姿の彼女にそっと上着をかけた……。
男の子は身寄りのない彼女を自分の家に住まわせてあげられないか家族に頼んだ。
彼の家族は、警察にはいきたくないと言う彼女に対し、理由も聞かず只々笑顔で了承してくれた。
こうして、一つ屋根のしたで彼女は、彼の家に居候することとなった。
そして、彼との楽しい一位年間はあっという間に過ぎていく。
満月の夜。
彼と彼女には思い出の丘があった。
彼女は彼に手紙を残し、夜中に家を抜け出しそこへ来ていた。
そう、お迎えが来るんだ。
その時だった、彼が来て彼女の手を掴んだ。
行くなって。彼は彼女に恋していたのだ。
彼女は一筋の涙を流し「また来るよ」と唱えた……、そう彼女もまた彼に恋していたのだ。
すると月から彼女を包み込むような光が降り立つ。
離さなければ……。男の子がその手を離さなければ、もしかしたら彼女は地上に残れたかもしれない……。
しかし、光に怯えた彼はその拍子に手を放してしまった。
彼女は空に消え、彼は意識を失った。
彼女が消えてから、彼は彼女に事を思い出せなくなってしまったようだ。
思い出の丘に来ては「何か大切なことを忘れている」とつぶやく日々を過ごし、そして大人となった。
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