あじさい

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パタンと。病室のドアが閉まり静かな病室に私達三人が残った。私は自分から切り出した。 「あの、お話ってやっぱり夏休みの旅行の事ですよね。やっぱり体に無理がありますし、みなさんに迷惑かけてしまうので行くのやめようかなって思っています。」 そうだよ。この方が良いよ。ゴールデンウィーク楽しかったし。もう十分だよ……。 すると、部長がうつ向き加減で語りだした。 「僕は中学生の時、体が弱くて入院する事ってよくあったんだ。病室って本当にやる事がなくて、暇で暇で、外で遊ぶ子達が羨ましかった。僕は治ったけど、君はもうここで最後を迎えないと行けないんだろ?」 部長は優しく私に語りかけた。 「もし君が僕達と一緒に行きたいって思うなら、最後に旅行、僕達と一緒に行こうよ?もし、何かあれば、僕達がその時は頑張るからさ」 「私も頑張るよ」 部長、涼子先輩とても嬉しいです……。 でも……、私の脳裏に倒れる瞬間の記憶が駆け巡った……。 でも……。 「ありがとうございます。お気持ちは、とても嬉しいです……。でも、恐いんです……。倒れる寸前、もう死ぬんだって本気で思ったんです。もう倒れるところ見せたくないですし……。」 でも……、それでも行きたい気持ちがないわけではない……。楽しかった、ゴールデンウィークを思い返した。 「少し……時間をいただけますか?」 「良いよ」って優しい笑顔で言ってくれた。 二人が帰った後、楽しかったゴールデンウィークの事を、思い返した。 『ここで最後を迎えないと行けない』……。 部長の言葉が不意に頭を過って、私は少し寝ることにした。
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