心霊スポット

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

心霊スポット

 地元ではとんでもなく有名な心霊スポットのトンネル。  友達数人で見ていた心霊番組の影響で気分が盛り上がり、みんなでそこに行った。  徒歩で十分程度の距離だし、そもそもみんな軽く酔っていたから、車は使わず徒歩でトンネルに向かった。  怪談なんて眉唾、怖がりの妄想に過ぎないなんて話を道すがらしていたけれど、いざトンネルの前に辿り着いたら、誰の口からも言葉が溢れなくなった。  威圧感としか言えない感覚を肌で感じる。  ここに入ってはいけない。  全員そう思っていた。だからトンネルの前で立ち尽くしていたのに、友達の一人が強がり、中に入ろうと言い出した。  無理だ。ここには入れない。入ってはいけない。  俺と他の面々は全員そう思った筈だ。でもそいつだけはひたすら強がり、俺達を意気地なしと罵ってトンネルの中に入って行った。  物凄く静かな場所なのに中の足音すら聞こえない。  幽霊云々は置いておくとして、こんなに静かでそやそやするような怖さの中、トンネルに入って行ったアイツは大丈夫だろうか。  何も言わなくてもその考えが全員の間に行き渡る。  トンネル内から声が響いたのはその直後だった。 「おーーーーーーーい!」  友達の声がする。どうやら何もなかったらしい。  心底からよかったと思った。でもその感情は、続いてトンネル内から聞こえてきた声の前に凍りついた。 「中には何にもないから、お前らも来いよ!」  言葉だけなら友達の誘いの声にしか聞こえない。でも、発されている声そのものが友達の声とはかけ離れているし、トンネルからとんでもなく異様な空気が漂ってくる。  中に入ってしまった友達のことは気になったけれど、恐怖心がそれを上回り、俺達は全員でその場から走って逃げた。  以来、そのトンネルには近づいてない。  そして、トンネルに入った友達も行方不明のままだ。  地元でとんでもなく有名な…今のご時世なら、ネットで世界的にも有名になっているだろう心霊スポットのトンネル。  …その一部に友達はなってしまったのかもしれない。 心霊スポット…完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!