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DREAM
はあ、と出た溜め息は暗闇の中に白くふわふわと溶けていく。
さっきまでいた豪華で煌びやかなパーティー会場とは違って、何もないビルの屋上はまっすぐ突き刺さるような寒さが心地良い。頬が元の温度に戻ってゆく。
私はいわゆる社長令嬢というやつで、こうやって何かあるごとにドレスを着て、高いヒールを履いてにこにこしていなきゃいけない。
ちなみに今日はパパの会社の創立記念日らしい。心の底からどうでもいい。
パーティーには、ほんっのたまーにかっこいい人も来るけど、ほとんどハゲとデブのクソジジイ。奴らは息を荒くして寄ってくる。
私まだ高校生なんだけど。
みんなパパのお得意先だから、私が断れないのを知っていて誘ってくるのだ。
思い出すだけで吐き気がするし、生まれてくる家を間違えたと後悔したのはもう数え切れないほど。
ほんとはブランド物のドレスなんか着たくない。
可愛くて暖かい部屋着を着て、漫画を読みながらゴロゴロしていたいんだ。
それか同年代の子達のように恋人とデートしたり、友達と鍋パでもしたい。
友達は私のことを羨ましいというけれど、私はみんなのほうが羨ましい。
こんなつまらない日常、早く捨ててしまいたい。
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