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「それこそ冗談に決まってるじゃない。真に受けないでよ。だいたいね、」
「…しっ。静かに。」
海さんの大きな手が私の口を覆う。
その瞬間また目の前が真っ暗になって1秒、気づくと私達は人混みに紛れていた。
さっきまでいたところ、大きなネオンの看板を見上げていたら彼に手を引かれて、早歩きで人々をかき分けてゆく。
「ちょっと…!」
「ごめん、少しだけ付き合わせちゃうかも。」
「…は?」
「見つかっちゃった。」
振り返ってニヤリと笑う海さんはどこか楽しそうに歩く。
この早歩きと彼の言葉からして追われてるような感じなんだけど、どうしたら笑うことができるのか。
それに脚の長い彼の早歩きは私の小走りで、高いヒールを履いているせいもあって少し辛い。
「こっち。」
「きゃっ、」
急に路地に入るからヒールが脱げてしまった。
海さんがそれを拾い上げて、また目の前が暗くなる。
次に着いたのは元々私達がいたビルの屋上だった。
「戻ってきた…」
「あー、やっぱりだめか。読まれてる。」
海さんがため息をつくと、目の前に現れた頭の先からつま先まで真っ黒の人たち。
なにあれ…人の形をしてるけど人じゃない。怖くて彼の後ろに隠れる。
「ねえ、何なのあれ…」
「お迎え来ちゃった。」
「…どういうこと?」
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