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「クラスメートの女子の父親が亡くなった」と朝のHRで担任が告げた。
病死だったそうだ。
当然クラスはざわついた。
皆噂を知っていたから、これが四年に一度の死ではないかと怯えて泣き出す女子まで出た。
他のクラスにも話は広がり、不謹慎にも面白がってその日は噂の話で持ちきりであった。
例に漏れず私も友達と「まさか本当に死ぬなんて」と話し合った。
「でもさ、これで終わりだよね」
「そうだね、うちらの中から誰か死ぬってことはないんだもんね」
「あの子はお父さんが死んじゃって可哀想だけど……」
「うん……」
クラスメートの親の死というショッキングな出来事は、怖い噂と結び付いて心の中に暗い影を落とした。
一週間後に忌引が明けて登校してきた女子生徒は、いつもと変わらぬ様子で気丈に振る舞っていた。
私はその姿を見て胸が痛んだ。
同時に、これで終わったんだとホッとしている薄情な自分に気が付いた。
嫌な出来事であった。
……ここで終わるはずだったのだが。
それからまた三日後、朝のHRの時間になってもとある男子生徒の席がぽっかりと空いていたのである。
「……昨日、A沢くんのお父さんが亡くなりました」
担任が告げるやいなやどよめきが起こった。
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