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解体された家
「せっかく建てた家を解体しろって!?
お国は何を考えているんだか?」
「お父さん、仕方がありませんよ、
大きな建物は、
敵機の標的になります!
戦争が終わって、
また建て直せばいいじゃないですか。」
当時のこの辺の家は平屋建てが多くて、
二階建ての家は、
田畑にポツリと目に留まるとても目立つ建物だというので、
軍部から、強制的に解体を命ぜられた家があった。
せっかく建てて数年ばかりの家が解体されてしまい、
終戦後また建て直せば良いと言われて、
我慢した家の主だったが、
戦後、疎開先から戻り、
すっかり焼け野原となってしまった光景を見て、
ああ、解体しておいて良かったと安堵したのも束の間。
解体した家の建材一式が、無いと言われた!?
疎開していたのに、戦後のどさくさで、
一家全滅した同姓同名の方と間違われて、
縁もゆかりもない他人様の家に使われてしまっていたのだ……。
家の主は、十数年間、家の建材の行方を探した。
市役所の職員が、地元の名士に融通していたことが分かった。
その家から返してもらおうにも、
半焼した家と、自分の家の建材を組み合わせて、地元の名士の家となってしまっていたのだ!
地元企業の経営者である一族に、主もまた世話になっていないことはなく、事を荒立てる訳にはいかなかったので、一応伝えたが、相手も寝耳に水で、悪意があって盗んだ訳でなく、持ち主が亡くなったので、使えると聞いてお金を出して買って使わせてもらったと、おわびの言葉を一言かけられただけで、返してもらえない状態だった。
解体された建材よりもずっと粗悪なものしか手に入らず、いっそ焼け落ちてくれた方が、諦めもついたのにと深く悔やんだ。
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