へびいちご、クリスマスを迎える

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そして、アニューが「こーひーへびいちご」の窓から見えるそのクリスマスツリーをイライラしながら眺めていたある日、1本の枝に手紙が挟んであるのを見つけた。 手紙は白い封筒に入っており、中を見ると 【サンタさんお願いです。僕の家に遊びに来てください。ご馳走たっぷりでもてなします。 プレゼントはなんでも構いません。どんなものでも僕はうれしいです。】 そう書いてあった。が、アニューはその手紙をびりびりに破り、ちょうど吹いてきた北風に飛ばしてしまった。 「アニュー、何を散らかしておるんじゃ。ちゃんと掃除しておけよ。」 コーヒーを飲みに来たフィッシュは頭から毛布をかぶり、分厚いウールのコートを三枚も重ねて着ていた。 「やなこった。掃除なんかしなくても、二、三日もすれば風が何処かに持って行ってくれる。それより、なんだその恰好は、もこもこじゃないか。」 「これはわが社で制作した新作ファッションじゃ。黒田がデザインした冬のあったか重ね着コーデ。ちょっと動きずらいのが難点じゃが、汗が出るほど暖かで真夏のような着心地じゃ。アニューもどうじゃ?着てみんか?」 「俺は前掛けだけあればいい。店に入るならそのコートは脱げよ。」 「ああ、アニューの店は狭いからな、このコートを着たままじゃミッチェが入れんからな。」 フィッシュはコートを脱ぎ、毛布を取って入り口のコート掛けに掛けると入り口が見えなくなった。
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