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「全く、邪魔だな、洗濯物は外に干せよアニュー。」
次に入って来たミッチェは入り口に山のようにかかったコートを叩き落とし、わざわざ三回踏みしめていつものカウンターの席に座った。
「俺のじゃねぇよ。フィッシュの冬の新作コートだと。」
「フィッシュのか。」
「ああ、ミッチェもどうじゃ、ぬくぬくポカポカのウール三枚重ねじゃ。」
「俺はいい。寒いのはそんなに嫌いじゃねぇしな。けど、ハピとネスに1枚づつ買うよ。」
「そうか!ミッチェはやっぱりいいやつじゃな。きっとそういうと思っとったよ。
じゃからもう作り始めておる。お届けは明日の午後じゃ。二人もきっと喜ぶぞ。」
フィッシュがミッチェに煙草を咥えさせ、火をつけたところで熱々の入れたてコーヒーがカウンターの上に2つ置かれ、1個には山のような生クリームが乗せられた。
「おう、今日は又、生クリームが見事にてんこ盛りじゃな。素晴らしい!これこそ芸術じゃ、アニューにはてんこ盛りの才能がある。」
「おだてたって俺はコートは買わねぇぜ。」
「連れないのぉ・・・わしとアニューの仲じゃないか。」
「だとしても、俺はコートはいらねぇ。冬は店から出ないからな。」
「さっき外にいたじゃないか。」
「あ、アレは誰かがクリスマスツリーにゴミをのっけたからだよ。」
三人はふーっと煙草の煙を吐き、窓の外に見えるクリスマスツリーを三人同時に見た。
「ゴミをねぇ。」
「ああ、ご丁寧に封筒の封までしやがって。全くどこのどいつだ。」
「アニューはなんやかんやでクリスマスツリーを気に入ってんだ。」
「きにいってなんかない。ただ、アレは俺のだ。俺の店の前にある限りは俺のだから、ゴミを乗せるのは許さねぇ。」
アニューは怒って煙草を思い切り吸うと、火をつけたばかりの煙草があっという間に灰だけになった。
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