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憧れの世界に降り立ち、俺は雪も氷もない事に、激しく感動した。
陽射しが俺に降り注ぎ、今まで感じた事のないぬくもりを感じた。
俺は空に向かって両手を伸ばし、陽射しのぬくもりを、体全部で感じようとしたが、行き交う人々が、
「邪魔なんだよ」
と言いながら、俺にぶつかってきた。
俺はこの人混みの中、一体どこをどうやって、人にぶつからない場所へ行ったらいいのか、分からなくて、その間にも人はぶつかってきて…。
そんな時、俺は突然手を掴まれ引っ張られた。
「こっち、ボーッとしてないで早く」
手を引かれるままについて行くと、人にぶつかられることなく、立っていられる場所に辿り着いた。
「ありがとう。助かった」
俺がお礼を言うと、目の前の女は少し怒ったような顔をしていた。
「なんであんな所で深呼吸とか始めるの?迷惑になるに決まってるでしょ!バカなの?」
初対面の女に怒られた…。
俺、王子なのに。時期国王なのに。
俺が訳も分からず怒られて、不機嫌な顔をすると、女は俺に顔を近づけて、ジロジロと俺の顔を見た。
「もしかして外国人?」
「そんなようなものだ」
「なら仕方ないか。それで、どこに行きたいの?道に迷ってるんでしょ?」
言われて俺は悩んで、困った。
「俺はどこに行けばいい?」
女は呆れたような、ガッカリしたような、なんとも表現出来ないような表情を浮かべた。
これが俺と彼女の出会いだった。
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