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送り主は一体何を思って自分なんかにこんな手紙を送り付けてきたのか。ふと、考えが頭を過るが、そんなことはどうでも良かった。
男は手紙を全て読んでやろうと思った。
しかし、きっと、この手紙がこんなに喜ばれる予定はなかっただろう。
男は黙々と手紙を読みだした。
数枚を残すところで電気を点ける。部屋の中は字が見えないほど暗くなり始めていた。
電気を点けると男は再び手紙に集中した。
そして、最後の一枚、最後のことば。
「巻き戻し」
誰が戻るものか! 男は憤った。
なんて意味のない手紙。良い暇つぶしにはなった。
けれど随分無駄な時間を過ごしてしまった。
後悔の念が襲う。
最近、毎日そうだった。どうでも良いことばかりに熱中して、手をつけなければいけないものには相変わらず手もつけず何も進まない。
男は腹が減っていることに気付いた。そういえば起きてから何も食べていない。この手紙が届いて、読み始めて……よし、何か食べようと男は立ち上がった。
しかし、行きかけて止まった。
――いや、先に少しは進めないと、そろそろ。
男は原稿用紙、本を何冊か、そして筆記具を机の上に並べた。
しかし、作業を進める気配はなく、パラパラと本を捲ってみたり、無意味に突然、ガタンとたちあがってみたりした。
それを何度も何度も繰り返している。
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