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今日も気がつけば何時間もくだらない手紙を読み、くだらない手紙を延々と書き続けている。
そんな毎日の繰り返し。
男は手紙を書き終えると、慎重に丁寧に折りたたみ、慎重に丁寧に封入し、しっかりと封をした。それからまた慎重に丁寧に宛先を書いた。
次の日、手紙を出しに行った後。男は、今日こそはと思い、もう半日も机にかじりついていた。
……が、進まない。終わらない。
ペンを握りしめたまま考え込んでいたが、次第に睡魔に誘われて、ついには舟を漕ぎ始めた。
と、チャイムの音。
ピンポーン。
男ははっとした。時計の針は午後一時をさしている。
ドアの外に立っていたのは郵便屋で届けられたのは差出人のない速達だった。良く見たことのある字で宛先は書かれている。
郵便屋は奇妙な顔で印鑑を求めると、不思議そうに去って行った。
男は部屋へ戻り机に向かった。
分厚い封筒の封を切る。
中身は意味のないことばの羅列。見たことのあることばが書き詰められている。
良く見たことのある字で。
一体何がそんなに男を駆り立てるのか。
ただ男は何かを待っていたのだろう。変わろうとしている自分、変えたいと思っている自分を待つように。
意味がなければない程、意味を持つモノへと変わってゆくことばたち。
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