喪主の務め

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 もともと普段からこの伯母は、一言で言うと「物凄くちゃんとした」人だった。身だしなみから所作、言葉使い、気配り、マナー等々、絶対に手を抜かない。全て原則通り、教科書通りに行い、決してぶれない。何事も人任せにせず極力自分で行い、そして完璧にこなす。顔を見てると、品行方正、謹厳実直、冷静沈着等々、堅苦しい四文字ばかり浮かんでくる(ついでに石部金吉というのも思いついたが、流石に女性にそれは気の毒なので脳内で削除した)。実際、大口あけて笑っているところなんて見たことがない。常に黙々と「やるべきこと」「正しいこと」をやっている。はっきり言って、一緒にいると気詰まりな感じがすることもしばしばだ。  一方、その妹である私の母は、対照的にかなりズボラな性格で、少々この姉のことが苦手らしい。そしてこの私も、その母の血を見事に受け継いでしまっているのだが、そんな抜けた所の有る姪を、何故かこの伯母は昔から可愛がってくれた。甥っ子や姪っ子というと、我が子とはまた違った独特な感情があるのだろうか。あるいは、常に気を張った生き方をしてるからこそ、私みたいに少しぼーっとして、のんびりと本ばかり読んでるような人間に何となく癒されるのかもしれない。とにかく実の妹、いや自分の家族からも少々疎んじられがちなこの伯母と私は、不思議と良好な関係を続けてきた、と少なくとも私はそう思っている。まあ、相手はどう思ってるか知らないけど。     
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