喪主の務め

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喪主の務め

 伯父が亡くなった。  日本有数の大企業の営業部長として、多忙ながらも順風満帆の日々を送っていたのだが、朝の通勤途上の駅で、突然の脳梗塞に襲われたのだ。そこから救急搬送されたまま、意識を回復することなく二日目に息を引き取った。  あまりにも突然の死に、家族もそして私達親戚も、暫くの間全然実感が湧かなかった。会社の同僚やその他関係者の方々も同じ思いだったことだろう。いかにも豪放磊落で生命力に満ち溢れた感じの伯父が、あんなにあっけなくこの世から消えたなんて、この私自身、今でもどこか信じられない思いでいる。  そんな突然の夫の死にも関わらず、残された妻、つまり私の伯母はいかにも気丈にふるまっていた。伯父の死亡の瞬間から未亡人になった彼女は、悲しみに浸る間もなく、親戚や会社、友人知人等への連絡、葬儀の手配、保険や相続の手続き等に、文字通り奔走していた。二名の子供達、つまり私の従兄弟達が既に成人して手がかからなくなっていたのは、不幸中の幸いだったと思う。     
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