インフェリ

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インフェリ

「いってきます」  彼と同棲し始めてからの日課。彼より早く起きて、彼の為にお弁当を作って、私が先に家を出る。今日は少し肌寒いかも。  今日のお弁当は一段目がオムライス。今日は寒くて予定より早く起きちゃったからケチャップライスじゃなくて、ちゃんとチキンライス。さすがに包んだ卵の上にケチャップで文字を……なんて可愛らしい事をするのは少し気が引けたから、小袋で添えてみた。ハートとか書いてくれればよかったのに、なんて言ってくれるかな。年甲斐もなくそういう可愛い事してもいいのかな、なんて。  今日は記念日だから、二段目は彼の好きなものをたっぷり詰めた。  メインは唐揚げ。いつまでも子供舌な彼好みの下味がついているこれは絶対欠かせない。ドーンと置いて、その隣にきゅうりで彩りを足す。もちろんその向こうにミニトマトを一つ。これがあるとないとじゃ全然見栄えが違うから、いつも本当に助かってる。  それから、アスパラのベーコン巻きと卵焼き。甘い卵焼きが好きな彼の為に、卵焼きにはたっぷりの砂糖を入れた。きっと気に入ってくれるはずよね。  思わず足が軽やかになってしまう。今日の夜は何を作ろうかしら。初心に帰って肉じゃがとか?ちょっとあざとい感じになっちゃうかな。ザ・彼女の手作り……って感じだもんね。でもやっぱり記念日だし、ちょっといいお肉を使ったハンバーグなんてのもいいのかも。この前作った時もきっと喜んでくれてたし。  付け合わせにサーモンのマリネ、デザートにパンナコッタなんてどうかしら。こっちは私の好きなものになっちゃうけど、いいよね。  でも、やっぱり帰ったら彼を私の腕で抱き締めたい。体温の低い彼は動くのが面倒だなんて恥ずかしがって抱き締め返してはくれないけれど、それでも構わないの。きっと彼は無口だし少食だから、好物ばかりのお弁当も今日の晩御飯だって食べてくれないかもしれないけれど、それでも構わないの。ただただ、家にいてくれるだけでいいの。どんな状態であっても、彼は彼だから。
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