大口様

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なるほど、一昔前に流行(はや)ったチェーンメールの妖怪版みたいなものか。 メールが送られてきたら、自分もそれを他の誰かに送れば厄を逃れることができる。 それと同じだ。 「何か、恐いね」 話を聞いていた少女が、薄暗くなった窓の外を気にしながら(ささや)く。 「うん。でもね……大口様の一番恐いところは、この話を聞いちゃった人の所に絶対現れるって言われてるとこ。ゆっこ、気をつけないと大口様に声かけられちゃうよ?」 「え? やだやだ、何それやめてよぉ! 本当にそんなの来たら香緒里(かおり)の名前出すからね!」 「そしたらあたしゆっこの名前出して返すから!」 話が盛り上がり、車内に響き渡るくらいの声を出して笑いだす二人を鬱陶(うっとう)しがるように、バスが停車場に到着した。 ちょうど降りる場所だったようで、少女たちは鞄を持って立ち上がるとじゃれ合うようにしながら下車していく。 「…………」 出発します、という運転手の声と共に乗車口が閉まり、再びバスが走りだす。
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