大口様

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数える程度しか乗客のいない車内は、少女たちが降りた途端に静寂に包まれる。 面白い話が聞けたなと思いながら、俺はチラリと降りたばかりの二人の方を振り向き、ハッと目を見開いた。 降りた二人は、ちょうどバス停からすぐ近くにあった脇道へ入っていくところだった。 そして、その少し後ろを何か異様に大きな人影のようなものが、まるで二人を追うかのようについていくのが一瞬見えたような気がしたのだ。 ――何だろう、今のは。 成人二人分はありそうな巨大な影を見た俺は、たった今聞いたばかりの都市伝説のような噂話を思い浮かべたが、すぐに頭を振り顔を前に戻した。 きっと、近くを走っていた車のライトが作りだした影が、たまたま人の形に見えただけだろう。 大きな口を開けた巨体の女を想像しそうになるのを無理矢理(こら)えつつ、俺は読みかけの本へ視線を落とし、あの少女たちが無事に家路につけることをそっと胸の中で祈った。
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